あれから数時間経ち、福島県に入った頃にはすっかり夜も明けて朝になっていた。
HR副長は休憩することもなく、ひたすら下道を走り続ける。
地元の港町とは全然違う盆地特有の山々に囲まれた風景が日光の眩しさと共に目に入る。
2人で福島県限定のご当地タバコを吸いながら、お互いの生立ちを中心に普段しないような雑談をして盛り上がっていた。

このご当地タバコとは2004〜2005年頃に世に出回った●●県限定のタバコみたいなものが全国に散らばって販売されていたもので、先に述べるが高校時代はこれを目当てに遠征の勧誘にも精を出していた。
秋田・山形・宮城・福島・新潟・東京は勧誘しに行って買った。
他にあった京都や鹿児島限定のもHR副長がサンプルをくれて口にすることができた。
ご当地ものだからそこの地域に行けば買えるのなんて当たり前なのに、購入する度に「功徳だあ〜」なんて言っていたのだからこじつけにも程がある。
しかし、遠征勧誘ついでに「ご当地の名産物」やら「ご当地キーホルダー」なんかを経済苦ながら上手くやりくりして買い漁り、数少ない楽しみを生み出していた方々は少なくないのではないだろうか。。。


…さて、福島県の道も中盤に差し掛かった頃である。

HR「福島には郡山会館っていう顕正会の会館があんなやの、会館初めてだよね?せっかぐだがら記念すべき初参詣に行こうが!」

もっこり「はい。是非!HR副長は疲れないんですか?こんな長時間運転して。しかもまだ半分くらいですよね?」

HR「あー全然大丈夫だよ!あ、あれが郡山会館だ!!凄いでしょっ!?」

もっこり「まぁ、、、そうっすね!」

この時の会館を見た正直な感想だが、割と新しめなクリニック的な小さな病院と勘違いしてしまうような外観だったため、スゲースゲーとずっと諸先輩方から聞かされてきた私にとっては正直拍子抜けした。
…が、せっかく連れてって下さったのだからこんなこと口が裂けても言えないと思い、凄いですねと話を合わせる。
そしてお邪魔した感想だが、これに関しても自宅拠点を公共化させたような印象であり、正直なところあまり感動は覚えなかった。
強いて言えば、諫暁書や顕正新聞などが山積みになっており、いつでも購入できることに関しては羨ましさを感じた…ぐらいであった。
参詣を済ませ、また出発するとメールが来ていた。

勧誘しようとしていた人である。

内容は「ごめん、やっぱ無理」と。
これは流石に申し訳なさ過ぎると思った。
私が心から謝罪をして戻りましょうかと尋ねると、HR副長は貴重な経験だから本部に行こうと私の背中を押してくれた。


郡山を過ぎたあたりでガソリンが一気に安くなる。
HR副長が給油しようと慣れた感じで国道沿いのセルフスタンドに入り給油する。
どうやら、在京で毎月あった隊座という今で言うところの隊集会にAS支隊長やSSK班長と一緒に参加するために東京会館へと通う中で身に付けた知恵らしい。
いつも近所のあの町に新しい店ができただの、誰が高校辞めただの地元でそんな話に終始していた私から見たらこれがオトナの視界ってやつかぁ〜なんて少し感心した。


暫くすると栃木県に入り、栃木県では渋滞もあって知らない地名も増えてきたせいか随分と長い道のりに感じた。
本部会館の近くまで来た頃には夕方になっていた。

HR「もっこり君、今日は大宮に住んでいるTK班長さん宅に泊めさせでもらおう。」

もっこり「はい。でもこんな突然なのに大丈夫でしょうか?」

HR「大丈夫!WI総補も今回の一件は知ってるがらの。有難くも全部段取り組んで下さった。今夜は総補どOS副長ど青年会館で会う。んで明日の朝はAB君どSU副長って方ど合流するごどになった。」

もっこり「久しぶりだなぁ〜AB君。みんなとお会いできるのメチャクチャ楽しみですよ!」

HR「俺もだ。まぁ、本部で勤行したらすぐに合流しよう。」


本部会館で勤行をした後、2人で青年会館の方へと向かう。
HR副長がだんだんと早歩きになっていく。
笑顔で手を振るとおかっぱ頭でスーツ姿のがっちりした方とスキンヘッドでラフな格好をしていた一見怖そうな方がそこに居た。
どうやらおかっぱ頭の方がWI総補、スキンヘッドの方がOS副長のようだ。


WI「おー!HR君、もっこり君、お疲れ様。よく来たね。遠くから疲れてない?大丈夫?」

OS「こんちわっす!HRさんお疲れ様です。もっこり君はじめましてOSです。」

HR「総補、OS君お久しぶりです!」

もっこり「はじめまして!総補、この前相談に乗って下さってありがとうございます。OSさん、AB君が今OS班で頑張っているお話は聞いています。これからもAB君のことよろしくお願いします。」

WI「立ち話もなんだからいっぷくしに行こう。もっこり君は未成年だからな…いい場所がある。そこで話そう。」


皆で談笑しながら青年会館近くの団地へと向かう。
やっぱり見渡すたびに都会だなぁなんて思った。
地方の空気や水は美味いという話はよく県外の方々から耳にしていたのだが今まで実感が湧かなかった。確かに違う。
マクドナルドの看板がくるくる回っているのなんて田舎では絶対に見ない光景だったしそれだけで大きな街に繰り出している感覚を覚えて興奮する。コンビニの数も尋常じゃないくらい目に入る。WI総補の地元の新潟ではひと昔前は近所にファーストフード店すらない状態だったそうだ。
入信前の話だがよく地元ではふざけて夜中に道路の真ん中で寝転んでみたりしていたがとんでもない話だ。
ここでもしそんなことしたら確実に轢き殺されるななんて思った。
そうこうしているうちに団地の広場に着いた。


OS「AB君東京会館の近くに住んで真面目に頑張ってますよ〜いやー本当に有難いっす!もっこり君って入信いつなんすか?」

もっこり「それは有難いです!今年の1月16日ですね。JJさんの紹介で(笑)」

OS「へぇ〜不思議な縁っすね〜。ってかメチャクチャ新しい入信じゃないっすか!今まで何名入信させてきたんすか?」

もっこり「1、2…16人ですね。」

OS「マジっすか!?スゲー頑張ってますね!」

もっこり「ありがとうございます!でも今怨嫉とか凄くてメチャクチャ落ち込んでますよ正直(苦笑)」

HR「今日も肚決めてここまで来たんだもんね。」

WI「頑張れば頑張るほど魔は躍起になるからね。でも大丈夫、僕は何も心配していない。もっこり君が現に肚を決めてここまで来た訳だからそれくらいの信力と行力があれば魔を退治することはできるよ。仏法に対して本気になることが大事だからね。」

もっこり「そうですよね。頑張ります!」

WI「じゃ、そろそろ行こうか。2人共気をつけて帰ってね。あ、HR君これで2人でご飯食べに行きなよ。」

HR「あ、ありがとうございます!」

この時WI総補が渡したものは数千円のお金だった。
どこまでも慈悲深い方だなぁと思ったし総補の御心遣いにただただ感動した。
早速、2人で地元にはない「松屋」で食事をして、TK班長宅へと向かう。
しかし、WI総補へのこの気持ちも2年後には崩壊することとなる。。。


すっかり夜も更けて大宮のTK班長宅で一泊させて頂いた。
玄関には大家族が住んでいるのではないかと錯覚するほどに沢山の靴が並べられており、TK班長は普段着姿で笑顔で私達を迎えてくださった。
夜空を眺めながら、3人でコーヒーを飲んで入信前のことをそれぞれが語り合う。
TK班長はこの自宅で自殺未遂を何回も繰り返していたそうだ。
決して明るい話題ではなかったが、新しい会員の顔を見ながら話を聞くということが新鮮であると感じた。


やがて就寝して翌朝、本部の早朝勤行へと向かう。
この時諸点供養と引き題目を初めて目の当たりにした私は、戸惑いまくった。
いそいそと集合場所へ向かいながら、これが本部スタイルなのかなぁなんて思った。
青年会館に行くとAB組長とSU副長が立っていた。


AB「久しぶりだのもっこり!」

SU「どうも初めまして。遠いところからわざわざ!有難いね。あ、この缶コーヒーみんなで飲みましょう。」

もっこり「久しぶりだのAB君!都会人になってもお元気そうで(笑)SUさん初めまして。コーヒーありがとうございます!」

SU「まぁ話は色々聞いてるよ〜今怨嫉大変なんだって?俺も落語家やってたんだけどさ〜師匠や同業者から散々言われまくって破門になっちゃったんだよね。まぁでも何があっても大丈夫ですよ!魔障を乗り越えた後に絶大な御守護があるからね!」

HR「ですよね。SUさんのこの前の登壇有難かったですよ〜!」

SU「いやいや、私なんか能無しなもんで未だに芸人ですわ。。。」

AB「…そろそろ行かないと。HRさん、また是非来てください!もっこり、理論書ちゃんと読めよ〜ただでさえお前は勉強嫌いだがらの(笑)」

もっこり「う。。。が、頑張ります(笑)じゃあまた!!」


ーこうして色々な方々とお会いした初めての本部参詣。
ずっと会えなかった同じ組織の人達とお会いできたのは大きな収穫だったと感じた。
HR副長も珍しく笑顔が絶えなかったし、これであとは頑張るだけだと思った。


ーあれから1週間程経ち自宅拠点にて


AS「HR君引きこもりさなてしまった。。。」